コスト減に寄与する視聴率予測をAIで強化
精度向上と予測時間40%短縮を同時に実現
業界:マーケティング
ソリューション:予測分析 視聴率予測 コスト削減 広告効果向上
総合的な広告代理店として業務を展開するADKマーケティング・ソリューションズは、顧客のビジネスに貢献するための統合型マーケティング支援を目指しています。その取り組みの1つとしてデータ活用に注力し、テレビ広告の分野では視聴率のデータがその代表です。広告枠の買付コストの約30%削減を実現している視聴率予測システム「Spot-Navi®」のさらなる精度向上や季節変動などへ対応するために、同社はdotDataを採用。その効果は定量的、定性的の両面で確実に表れています。
課題
- テレビ業界の急速な変化とともに20年積み上げてきた視聴率予測システムの停滞が顕著に
- 変化に即応した予測ができるブレークスルーが必要
- 予測精度が個々人のスキルに依存
ソリューション
効果
- 視聴率予測の誤差が従来よりも約2割削減し、広告枠買付けの戦略を最適化
- 予測までの時間を30~40%短縮
- 広告効果向上により、営業担当者の新規得意先の獲得と継続に寄与
お客様の声
沼田 洋一氏
20年にわたり積み上げてきた視聴率予測システムをブレークスルーして次に進むための方策として、dotDataを導入しました。
藤森 賢一氏
dotDataによって、属人スキルに頼らないデータに基づく予測が実現し、精度が大幅に向上しました。
ADKマーケティング・ソリューションズ(以下、ADK MS)は、視聴率予測システム「Spot-Navi®」を、20年にわたって開発・運用し、継続的に改善を続けています。「今後3ヶ月間の番組単位の視聴率を予測し、広告枠をテレビ局から買い付ける業務で利用します」(同社の沼田洋一氏)。広告枠の価格は、直近数週間の視聴率の平均値で決まります。一方、実際の視聴率は様々な要因で変化します。そのため、価格に対して割高な広告枠もあれば、逆に割安な広告枠も生まれます。視聴率を正確に予測できれば、広告枠のコスト対効果を分析し、買い付けの戦略を最適化することができます。
従来のSpot-Navi®では、過去1年といったロングスパンの視聴率データを基に視聴率を割り出します。広告枠の買付コストを約30%も削減する一方、視聴傾向の変化に柔軟に対応する点に課題がありました。さらに「特番のような単発・局所的なものは過去の平均では測れませんので、人手を使った補正も加えながら精度を高めてきました。20年にわたる継続的な運用で高い精度は保っていましたが、頭打ちの印象がありました」(沼田氏)。
人の経験知に基づく精度改善は大きな工数と業務の負担となり、また精度が個々人のスキルに依存してしまうという問題があります。そこで、テレビ業界を取り巻く時代の変化に即応できるような視聴率予測システムに生まれ変わるためのブレークスルーを求めて、AIによる視聴率予測を検討することにしました。
精度と人手での運用に課題
dotDataでデータに基づいた高精度な予測が可能に
従来のSpot-Navi®による予測の課題はどこにあったのでしょうか。沼田氏は「過去からの平均をベースにした従来のモデルでは、季節性やトレンドの影響などを反映できるように予測ロジックの改善を繰り返してきました。しかし、これらの要素を上手く組み合わせて予測値を算出するのは難しく、人手の運用や妥協もありました」と振り返ります。さらに「録画データが視聴率に含まれるようになる」「インターネット利用の拡大によるテレビ離れ」といった環境の変化など、様々な傾向や、新たなデータを用いた予測などが求められていました。そこで、ADK MSではAIを視聴率予測に活用することにしました。AIがデータを分析して、常に変化する視聴者の傾向を学習することで、人手に頼らずに高精度の運用を行えるのではないかと考えたのです。いくつかのツールについて、実際にPoC(概念実証)の形式で予測視聴率を算出し、精度・運用・省力化の度合いなどを比較した結果、dotDataを導入しました。「他社製品と比較した際に『AIに関する専門知識や、データの傾向に関する経験知を駆使しなくても、データを与えればツールが上手く試行錯誤をしてデータに隠れた視聴率の傾向(特徴量)を発見し、高精度なモデルを構築してくれる』という思想や仕組みが、dotDataを採用する決め手になりました」と沼田氏は語ります。
トライアンドエラーで予測精度を向上
データの前処理を最適にチューニング
ADK MSはdotDataによるAI視聴率予測のプロジェクトを推進するために、藤森賢一氏をプロジェクトマネージャー(PM)として抜擢しました。藤森氏は、従来の人手と経験知に代わって、番組に関する属性情報や過去の視聴率データをdotDataへ入力し、視聴の傾向やパターンを「特徴量」として算出・定量化することを目指しました。
dotDataを最大限に活用するために、プロジェクトチームが力を入れたのが、適切なデータを準備することです。藤森氏は「dotDataは、データから傾向やパターンを特徴量として発見できる強力なツールです。種類や期間など、視聴率に効いてくる適切なデータを準備するには試行錯誤がありました」と振り返ります。「どのようなデータを投入すればよりよい予測ができるか。すでに実測値の視聴率がある過去の番組に対してdotDataを使って予測し、どのようなデータを使うと精度を高められるかを繰り返し検証しました。通常のAIツールだと、データの傾向や特徴量を人手で分析する必要があるため、このような試行錯誤には非常に大きな手間と時間がかかります。しかし、dotDataはデータを投入すれば特徴量を自動で分析してくれるため、素早く実施できました」(藤森氏)。
AIによる予測の精度や品質は、究極的には入力したデータにどのくらい意味のある情報が含まれているかで決まります。そのため、データを着実に整備することで、dotDataでより高い精度の視聴率予測を実現しました。
視聴率の誤差が2割も減少
短期的なトレンドを考慮した予測が可能に
予測モデルの開発に際しては、新旧のモデルを定量的に比較しています。藤森氏は、「dotDataによって、月別の傾向が予測に使うパターンの特徴量として加味され、さらに曜日や時間帯などの様々な要素と組み合わせ、短期的なトレンドを予測に反映することができました」と語ります。「予測値と実際の視聴率の誤差が2割も減少しました。さらに、予測値と実際の視聴率の相関係数では、従来のモデルでは90.7%でしたが、95%程度まで高まっています」(藤森氏)。
また、3カ月分の視聴率を予測するための期間も、従来に比べて30%から40%短縮できたと言います。ADK MSでは、dotDataによるAI視聴率予測を採用した Spot-Navi®を「Spot-Navi® AI版」として2021年3月にリリースしました。「最近は、営業の現場から『精度が上がってきている』というコメントをもらうことが増えています。実質的な成果としては、新規得意先の獲得や継続、広告効率改善につながっており、社内でもAI活用への理解が広まり、導入の効果が評価されています」(藤森氏)。
今後は視聴率予測以外にもdotDataの活用を検討
Spot-Navi® AI版は、高い精度を維持し、さらに改善するために継続的な更新を続けています。藤森氏は「視聴率の傾向は、視聴者や環境の変化に影響を受けて変化していきます。予測モデルは一度作ったら終わりではなく、日々予測精度を確認しながら、dotDataに鮮度の高い視聴率データを投入し、毎月モデルを作り直しています」と説明します。
ADK MSでは、他にも様々なデータを保有しており、今後Spot-Navi®以外にも予測やデータからの知見の発見にdotDataの活用を広げていく計画です。特に、dotDataはデータを入力すれば、特徴量設計から予測モデルの作成までを自動化するため、ADK MSの幅広い業務にデータ活用が浸透することを期待しています。藤森氏は「Spot-Navi®の成果を元に、社内で活用を促進しているところです」と語ります。藤森氏は、これからAIの導入を検討するユーザーに対して「AIの導入には試行錯誤が必要ですが、dotDataを使えばその敷居を大きく下げることができます。
データからAIを利用してどのようなことができるのか。まずは、dotDataでクイックに試しながらAIを学んでいくことで、活用の幅を広げていけると思います」と言います。今後ADK MSの社内でも、藤森氏の活用促進活動を受けて、dotDataによるAIが新しいビジネスを作り出すことにつながっていきそうです。
株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ
https://www.adkms.jp/所在地 | 〒105-6312 東京都港区虎ノ門一丁目23番1号 虎ノ門ヒルズ森タワー |
---|---|
従業員数 | 約1,490名 |
創業日 | 1956年3月 (前身:株式会社旭通信社) |
事業内容 | マーケティング課題解決の統合的な提案・実施、デジタルおよびマスメディアのプランニング・バイイング、データドリブンマーケティング等を行う、ADKホールディングスの一角をなすソリューションカンパニー。クライアントのあらゆる課題に向き合い、マーケティング領域における総合的なソリューションを提供する。 |