株式会社JALエンジニアリングは、 JALグループが運航する航空機の機体や部品の整備を一手に担う企業です。JALグループの機材以外にも、国内外の航空会社の機材を国内の空港で整備するサービスも手掛けており、航空機整備に関して国内トップクラスの実績を誇ります。
整備部門では「イレギュラー運航ゼロ」、「飛行中の不具合ゼロ」、「定時出発率 100%」を目指す「ゼロゼロ100」というスローガンを掲げ、さまざまな取り組みを進めています。その目玉施策の1つが「故障予測プロジェクト」です。同社は長らく機材品質を向上させるため、整備業務の品質や効率を継続的に改善してきました。中でも不具合の発生前にその芽を摘む「予防整備」に注力しています。以前の予防整備は、整備士が目で機体をチェックしたり、耳で異音を聞き分けたりと、人間の「五感」に頼る部分が大きいものでした。近年は航空機に取り付けられたセンサーから取得した大量の「フライトデータ」に対しビッグデータ分析を実行し、そこから不具合の予兆を見い出す施策に注力しています。同社の技術部で分析を手掛ける谷内亨氏によると「故障予測プロジェクト」と名付けられたこの取り組みは2016年からスタートし、これまで数々の実績を積み重ねています。
「運航中の航空機から得られるセンサーデータと、過去に実施した整備に関するデータ分析ツールで統合的に分析しています。その具体的な方法は、まず整備士・エンジニアの経験と知見に基づいて不具合に至るシナリオの“仮説”を立て、その仮説を過去データに基づいて検証した上で、予兆を示す『特徴量』をデータの中から見いだします。それから、実際にその特徴量を用いて予兆を検知できるかどうか、過去データを用いて検証します」こうした一連の手法は同社内で「仮説検証型分析」と呼ばれています。これまでに不具合の予兆を検知できる「故障予測モデル」を100件ほど作成するなど、この手法は着実に成果を上げてきました。