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三菱電機ビルソリューションズ
データ利活用文化の社内浸透

~現場も使えるAIと伴走型の支援を得て、市民データサイエンティストの実現へ前進

なぜデータの利活用が進まないのか。取り組みを開始する段階では、見込めるリターンの把握が難しい。三菱電機ビルソリューションズは、長年ROI(投資利益率)が、データ利活用の障壁となっていた。しかし、同社は、現場でも使いやすいAI、そして、使いこなしを支援する伴走型のサポートを得て障壁をクリア。現在、全社を挙げたデータ利活用プロジェクトを進めている。キーパーソンに、プロジェクトの概要や進捗を聞いた。

市民データサイエンティストに将来性を感じた

──全社を挙げてデータ利活用スキルの習得、データ利活用文化の醸成に取り組んでいるそうですね。きっかけをお聞かせください。

板倉氏:
 三菱電機ビルソリューションズは、昇降機やビルシステムなどの開発、製造や保守・工事をはじめ、冷凍・空調設備の保守・工事、各種ビル設備の監視サービスなどを提供する企業です。現在、これらの事業を支えている基幹システムの全面リニューアルに取り組んでいます。次期基幹システムは、さまざまな特長を備えていますが、データの積極的な利活用を見据えていることも、その1つです。

 ただし、基幹システムがいくらデータ利活用に役立つ機能を備えていても、実際に取り組むのは「人」。そこで、基幹システムのリニューアルと並行して、データ利活用スキルの習得、データ利活用文化の醸成に取り組むことにしました。

三菱電機ビルソリューションズ株式会社
プロセス・オペレーション改革本部
ITシステム推進室 IT推進第二部
次期基幹システム開発プロジェクト 参事
板倉 建太郎氏

──取り組みは、統計学や分析に関する知識、専門的なプログラミングスキルなどを持たないユーザー自身が、分析を駆使してデータから有益な情報を得る「市民データサイエンティスト」の考え方のもと、現場の社員をデータ利活用の中心に据えています。理由をお聞かせください。

萬束氏:
 市民データサイエンティストの考え方に大きな将来性を感じたからです。活用するデータは、これまでのビジネスで各部門が蓄積してきたもの。それが全社に膨大にあるわけですから、特定の部門ではなく、各業務のプロフェッショナルである現場を中心に全社で活用するべき。そのような文化を醸成することができれば、今後、データから継続的に付加価値を生み出し、「強い会社」の基礎にできると考えました。

三菱電機ビルソリューションズ株式会社
プロセス・オペレーション改革本部
ITシステム推進室 IT推進第二部
次期基幹システム開発プロジェクト 主事
萬束 高久氏

dotDataがROIの課題を解決

──全社的にデータ活用に取り組む。非常に大きなプロジェクトですがスムーズに取り組みを開始できましたか。

遠藤氏:
 当社は、これまでデータ活用に全く取り組んでこなかったわけではありません。現在のようにAI(人工知能)や機械学習などが注目を集める以前から、三菱電機の研究所と現場が連携して独自のアルゴリズムで昇降機や空調機の故障予知に挑戦するなど、さまざまなプロジェクトにチャレンジしてきました。しかし、個々のプロジェクトで成果は出ていたものの、全社で見ると一部の組織に限られた取り組みになっていました。その理由の1つとして、決して高いとはいえない、ROIが上げられます。リターンの見込みが立たない状態では、意思決定も慎重にならざるを得ません。このROIが全社的なデータ利活用の大きな障壁でした。

 その障壁を取り除いてくれたのがdotDataです。

三菱電機ビルソリューションズ株式会社
日本事業統括本部 事業推進本部 保守技術統括部
空調冷熱・システム保守技術部
省エネ・ビル管理課 主事
遠藤 嘉人氏

──dotDataがどのようにROIの改善に貢献したのでしょうか。

板倉氏:
 AI開発をスクラッチで行うとなると高度なノウハウや経験が必要。私たちがデータ利活用の中心に据えている現場の社員では、とても対応できません。仮に教育にとりかかっても時間が掛かるし、最終的にきちんと育成できるかどうかは未知数です。ならばと、内製を諦めて外部に委託すれば、当然、費用が掛かります。

 dotDataは、データ加工、特徴量の設計、そして機械学習など、AI開発のプロセスを自動化してくれます。これにより、AI開発のための育成コスト、開発コスト、外注コストの課題を解決し、ROIを向上してくれます。

萬束氏:
 dotDataと同様に自動機械学習(AutoML)と分類されるほかの製品やサービスも検討しましたが、dotDataには、いくつか優位性がありました。

 まず派生的な説明変数を自動生成してくれる点です。「気温」が組み込まれた分析モデルなら「一日前の気温」「毎週月曜日の気温」「毎月の特定の日の気温」などを自動的に生成してくれます。

 辞書機能も評価しました。どの業界にもあると思いますが、私たちビルソリューションの分野にもさまざまな専門用語があります。ビジネスに役立てるわけですから、それらの言葉は必要不可欠。dotDataなら、辞書に専門用語を登録していけます。

 また社員の全員が英語が得意というわけではありませんから、日本語対応も私たちにとってはありがたい仕様です。

遠藤氏:
 言葉の点では、自然言語処理には大いに期待しています。たとえば、昇降機や空調施設のメンテナンス業務などには、日報や点検記録など、自然言語で記載している文書が膨大にあります。それらも貴重な資産ですから、積極的に利活用していきたい。高度な自然言語処理を備えたdotDataなら、それができると考えています。

板倉氏:
 そして、なによりdotDataはユーザー数が増えてもライセンス費用が変わりません。全員でデータの利活用に取り組む──。データの民主化、市民データサイエンティストの実践に最適なソリューションです。

つまずきそうなポイントに先回りして手を打つ

──実際の取り組みは、どのように進めましたか。

萬束氏:
 NECの「DX人材育成サービス」を利用して進めています。基本はOJT(On-the-Job Training)で、実際にdotDataを使って自分の業務課題を解決していく演習に取り組んでいます。

 現在、演習を行っているのは8チーム。たとえば、バックオフィスからは総務・人事部門が参加し「人員変動予測」に取り組んでいます。既に業務への適用が見えているものもあり、大きな成果につながっています。

遠藤氏:
 建物管理の分野では、空調の設定温度と室温との相関を分析する取り組みを行っています。これは外気温や在館人数などの影響を受けて、設定温度が一定であっても室温には温度のムラが生じるためです。室温をより正確に予測できれば、より効果的な建物管理が行えるはずとの仮説を立てて取り組んでいます。

板倉氏:
 参加者からは、最初は難しいかもしれないと身構えていたが、やってみると意外にできた。少しでも成果が出てくると、やはり楽しい。ぜひ継続して参加したいなど、前向きなコメントが多く出ています。経営陣からも、興味深い取り組み。途中で形骸化させず、継続してほしいと後押しを受けています。

──素晴らしい成果ですね。成果を導くために、事務局で行った工夫などがあれば、お聞かせください。

萬束氏:
 どこでつまずく可能性が高いか。最初に、それを想定して、手を打ちました。たとえば、クレンジングなどのデータ加工は、いきなり大量のデータを扱うとなると工数がかかり、げんなりしてしまう可能性があります。そこで、まずは少ないデータでやるよう、最初からアナウンスしておきました。

 また、競争意識を刺激する工夫も行いました。演習は業務の傍らで取り組むわけですから、どうしても業務を優先してしまう場面が出てくるかもしれないと考えました。そのような場面でも、ぜひ演習の成果を追求して欲しい。そう考えて、8つのチームが一堂に会し、経過を報告する報告会を定期開催しています。

遠藤氏:
 もっとわかりやすく解説してほしい。コンテンツを追加してほしいなど、トレーニングを進める中でNECにはさまざまな要望を伝えましたが、そのたびに、要求を真摯に受け止め、迅速に改善案を提案してくれました。NECの対応にはとても感謝しています。

──今後の展望をお聞かせください。

板倉氏:
 データ利活用のプロジェクトが成果につながりはじめている。今後、継続すればより大きな成果できそうだと、社内の期待も高まっています。参加するチーム数を拡大させるなど、施策を見直しながら、市民データサイエンティスト文化の醸成に向けて、取り組みを継続していきます。いずれはグループ会社にも拡大し、さらに大きな成果をビジネスに還元したいですね。

上記の記事は日本電気株式会社の許可を得て転載しています。元の記事はリンクからご覧ください。

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