日本生活協同組合連合会

需要予測システムで属人化を解消。日本生協連が計画数予測を2週間に短縮

業界:小売・流通
ソリューション:需要予測 在庫発注業務の効率化 現場主導のデータ活用

全国の生協が加盟する日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)の通販本部は、年間約600億円の事業規模を持つカタログ事業(衣料品・家庭用品など)において、商品の「計画数予測業務」の属人化と精度向上に課題を抱えていました。同本部は、高度なプログラミングスキルを必要とせず、予測の根拠やプロセスを可視化できる「dotData」を採用。AIが生成する特徴量から、前年実績だけに囚われないデータ上の事実を発見し、従来1〜2ヶ月要していた予測プロセスを1〜2週間に短縮するなど、現場主導のデータ活用へのシフトを進めています。

課題

  • 毎週変わる配布エリアや掲載面積などの複雑な条件により、過去の実績をそのまま流用できない
  • 20年の経験を持つベテランの知識に依存しており、担当者変更時に予測精度が落ちるリスクがある
  • 人間の予測では的中率が5〜6割で停滞し、在庫の返品コストや欠品による機会損失が発生していた

ソリューション

需要予測 システム
  • なぜその予測結果に至ったかのプロセスが画面上で一目でわかる、透明性の高いAIとして「dotData」を導入
  • 掲載面積やモデル着用情報、外部の天候データなど、現場の知見に基づく多角的なマスターデータを統合
  • 専門知識のない現場担当者が自らデータ加工や投入を行い、モデルの検証・改良を自走して行える体制を構築

効果

  • 期間短縮:従来1〜2ヶ月要していたシーズン全体のサイズ・カラー別予測を、2週間での一括算出へ短縮
  • 精度の再現:アパレル既存商品において、ベテラン職員が手作業で出していた5〜6割の的中率を即座に再現
  • 新たな発見:「過去2〜3年の平均値」や「天候」など、人間の先入観を覆す重要な相関関係をAIが自動検知
  • 意識の変革:現場職員がデータ加工を自発的に学び始め、ファクトを基準に会話する組織文化が定着

お客様の声

猪熊 晋三氏
日本生活協同組合連合会 通販本部 本部長

猪熊 晋三氏

AIに丸投げすれば勝手に最適な答えが返ってくるわけではなく、予測が外れた際に現場が理由を分析して補正をかけられる透明性が必要でした。今回の取り組みを進めたことで、現場の普段の会話のなかにデータの扱い方に関するテーマが出てくるようになった変化は非常に大きいと感じています。単なる一過性の作業効率化で満足せず、職員一人ひとりが手段を増やして自発的に事業を成長させていく原動力にしていきたいです。

川口 剛史氏
日本生活協同組合連合会 通販本部 カタログ供給企画部 部長

川口 剛史氏

人間の経験則による予測では的中率が5〜6割前後で停滞しており、これ以上の精度向上は限界だと感じていました。dotDataの導入によってアパレル既存商品の予測値が1週間で出力されるようになり、実務での単独稼働をスタートさせています。この取り組みを機に、より予測しやすいデータ環境を作るため川上の商品企画段階からサイズ表記などのマスターを統一・整備する動きにまで発展しました。

熊谷 悠氏
日本生活協同組合連合会 通販本部 カタログ商品部 計数グループ グループマネージャー

熊谷 悠氏

システムによって高度な分析結果を効率的に可視化できる一方、自社の業務に即したデータを丁寧に準備することの大切さも学びました。AIの仕組みをより深く理解して実務に活かそうと、現場のメンバーが自発的にデータ加工の基礎を学ぶ勉強会を立ち上げています。従来は手作業で1〜2ヶ月要していた業務が2週間に短縮されたいま、客観的な数字を共通の基準として会話する文化が現場に定着しつつあります。

カタログ特有の複雑な条件と、
ベテランの「勘・経験」に頼る予測の限界

日本生協連の通販本部は、衣料品(アパレル)や、寝具・インテリア・家具などの家庭用品を中心に、年間約600億円規模のカタログ事業を展開しています。年間で約160種類のカタログを制作しており、全国で100をこえる会員生協ごとに毎週どのカタログを配布するか決めていますが、配布時期、配布部数、配布するカタログの組み合わせ、などその条件は毎週バラバラで非常に複雑です。

さらに需要予測(計画数策定)を困難にしているのが、紙面(売り場)の変動です。全く同じ商品であっても、掲載される面積の大きさ(面積効率)や、モデルがその服をカタログ上で着用しているか(メインカラーか否か)によって売れ行きは変動します。新商品の追加やカラー展開など都度条件が変わるため、単純な過去の実績集計だけでは通用しない特殊な難しさがありました。

通販本部で計画数予測業務を担うメンバーは、当時の状況を次のように振り返ります。「従来はExcelを用いて過去の実績を引っ張り出し、面積効率などの指標に当てはめながら、最後は20年の経験を持つベテランのノウハウを頼りに手作業で計画数を組み立てていました。ジャケットなどの全体数から色、さらにサイズへと手動で段階的に分解していくため、他の業務を並行しながらだと1〜2ヶ月もの時間がかかっていました」

人間による予測では、全体の的中率が5割〜6割前後で停滞しており、商品の約半分で予測が外れてしまうことが課題でした。予測が外れれば、倉庫内の不要な在庫が発生し、結果として物流コストが多く発生します。逆に発注が足りなければ機会損失(欠品)を起こして組合員に迷惑をかけるというジレンマがあり、さらに人事異動で新人が入るたびに感覚のブレによって精度が落ちるリスクもあったため、属人化を解消しデータを客観的なファクトとして扱える仕組みへの移行が求められていました。

需要予測システムに求めたのは「精度」だけでなく
「予測プロセスの可視化」

こうした課題の打破に向け、通販本部が注目したのが、AIによるデータ分析プラットフォーム「dotData」でした。ECサイトのリプレースを契機に展示場で本製品に出会った同本部は、他社ツールと比較することなく導入を決めました。最大の決め手は、高度なAIでありながら、なぜその結果に至ったかのプロセスが見える「可視化のしやすさ(透明性)」にありました。

「一般的なAIはデータを投げ入れると最適な答えだけを返してきますが、それでは『なぜその予測値になったのか』という理由が現場には分かりません。dotDataは、どういう分析手法を使い、どのデータの組み合わせ(特徴量)が予測に効いているのかが画面上で可視化されます。AIに丸投げするのではなく、予測が外れたときには現場が理由を分析して補正をかけ、繰り返しモデルを改善していける。この『繰り返し改善していける道具』としての特性こそが、内製化を目指す我々の思想に合致していました」

先入観を覆すデータの発見と、予測期間を2週間へ短縮

dotDataの導入は、業務プロセスの刷新と、これまでの常識を覆すデータ上の事実(インサイト)をもたらしました。

大きな効果の一つが、予測にかかる「時間の短縮」です。従来は1〜2ヶ月かけて段階的に算出していたシーズン全体のサイズ・カラー別予測が、データを取得してdotDataに読み込ませることで、2週間で一気にまとめて算出できるようになりました。これにより、担当者は追加受注への対応や在庫調整、最終着地までの調整など、予測の次工程にある実務へパワーをシフトさせることが可能になりました。

精度面でも、衣料品の既存商品領域において、人間が1〜2ヶ月かけて作っていた予測値が、dotDataにデータを読み込ませることで短時間で出力され、ベテラン職員が手作業で出していた5割〜6割の的中率を即座に再現できることが確認されました。20年の経験がなくてもツールを回せばベテラン職員と同等水準の予測値を再現できるようになり、すでにアパレル領域での実務運用(単独稼働)をスタートさせています。衣料品はカラーバランス(定番の白・黒・ベージュは出るが、オレンジなどは売れにくい等)やサイズ構成(Mサイズが最も出る等)で説明がつきやすいため、非常に相性が良いことも分かりました。

さらに、dotDataの特徴量自動設計技術は、人間の先入観を排したデータ上の事実を提示しました。「人間は需要予測の際、どうしても直近の前年実績を一番重く見てしまいがちです。しかしdotDataは、直近データよりも『過去2〜3年分の平均値』の方が予測に強く寄与しているという事実を示しました。実際に調べてみると、確かに2年前、3年前のデータの方が数字が合っているという発見がありました」

また、人間が予測を立てる際、リスクを恐れて「4:6」のように様子見の中間値に落ち着かせてしまうような場面でも、dotDataはデータに基づき「8:2」「9:1」といった思い切りの良い比率を提示します。

この「先入観のないデータの検証」は、コンタクトセンターの入電予測(キャンセルや問い合わせのボリューム予測)という別業務の検証でも活かされました。「関係ないだろう」と思いつつもdotDataに「天候データ(東京・大阪)」を投入してみたところ、雨や曇りの日に在宅率が上がり電話をかけやすくなるためか、問い合わせ入電予測の精度が人間と同等程度まで改善したのです。プロのデータサイエンティストであれば「効かないだろう」と見送ってしまうようなデータでも、dotDataであれば容易に投入して検証できるため、業務部門の先入観のないアイデアがそのまま活きた場面でした。

AIは魔法の杖ではない。現場が主導する
データ活用文化への変革

dotData導入がもたらした成果は、効率化の数字以上に、現場担当者たちの「意識の変化」にあります。

「最初は正直、ボタンをポチッと押せば勝手に良い予測が出てくるものだと思っていました。しかし実際に触れていく中で、現場の知見(モデルの着用情報や売り場効率など)を自分たちできちんと構造化し、正しいデータを準備してツールに読み込ませなければ本当の価値は出せないのだと気づいたのです」

この気づきが、現場に主体性を生みました。IT部門ではない通販本部の現場担当者たちが、「自分たちでデータを加工して理解し、将来的にモデルを改良できるようになりたい」という動機から、本来苦手意識のあったデータ加工(SQL)の自発的な勉強会を内部で立ち上げたのです。

現在では、データから導き出されたファクトを基準に普段の会話や業務の改善を行う文化が、一般職員の間にまで芽生え始めています。さらにその影響は、データの傾向に合わせて、川上の商品企画段階からカラーの呼び方やサイズ表記のマスターを統一・整備しようという、業務改善の動きにまで波及しています。

在庫・発注業務につながる計画数予測を、
現場主導で内製化

在庫・発注業務につながる計画数予測を、現場主導で内製化

日本生協連の通販本部は、dotDataの活用を単なる一過性の作業効率化ツールとして捉えてはいません。今後は、アパレル領域で得た内製化のプロセスを家庭用品(サイズ幅が広く予測モデルの共通化が難しいカーテンなど)へと横展開し、並行稼働からの完全移行とさらなる精度向上を追求していく構えです。

さらにその先には、算出された計画数をベースとして、「在庫や注文の状況からシステムが自動で最適な発注量を割り出す」という、調達・発注業務そのものの高度化・自動化への応用も見据えています。単に「予測が便利になった」という段階を超え、サプライチェーン全体の最適化へと踏み出す準備が始まっています。

「ビジネス環境が激変し、労働人口も減少していくこれからの時代、人の経験だけに頼った業務を続けていくことはできません。dotDataを通じて現場の一人ひとりがデータベースの構造を理解し、データの扱い方を学び始めたことは、当本部がデータに基づいて判断する組織へと成長していくための、確固たる第一歩になったと確信しています」

日本生活協同組合連合会

https://jccu.coop/
所在地 〒150-8913 東京都渋谷区渋谷3-29-8 コーププラザ
事業内容

全国の生協(消費生活協同組合)が組織する全国連合会。コープ商品の開発や供給(販売)、会員生協の事業・経営支援、通販事業などを展開。

AI活用事例

株式会社ローソン

dotDataの特徴量で消費者の価値観を理解
ターゲティング広告の商品購入率が12倍に

株式会社JALエンジニアリング

「遅延・欠航ゼロ」を目指して
dotDataの特徴量が故障予測分析を高度化

よくある質問

需要予測システムの精度を高めるには、過去の販売データだけでなく、商品の売れ行きに直接影響を与える「売り場(掲載)情報」や「外部環境データ」を組み合わせることが不可欠です。例えば、アパレルやシーズン品であれば、カタログの掲載面積やモデルの着用有無、過去の天候データなどを統合することで、人間の先入観を排した高精度な予測モデルを構築できます。

具体的には、以下のようなデータを需要予測システムにインプットすることで、AIによる需要予測の適正化が進み、過剰在庫や欠品による販売機会損失を大いに削減できます。

  • 販促・MD業務データ:紙面・ECでの掲載面積、割引率、特売品情報、モデル着用情報
  • 環境データ:気温、降水量、天候の推移(特にコンタクトセンターの入電予測やシーズン品の初動に影響)
  • 市場予測データ:競合の動向やトレンド情報

現場の担当者が自らデータ加工や投入を行い、予測モデルを自走して改良・検証できる「透明性の高いシステム」と体制を構築することが重要です。AIをブラックボックス化させず、なぜその予測値に至ったかのプロセスを可視化することで、現場は「AIを使いこなす道具」として捉え、データに基づいた意思決定を行う文化が定着します。AI需要予測を「魔法の杖」として丸投げするのではなく、予測が外れたとしても業務部門が主導して「なぜ外れたのか」をファクトベースで分析し、主体的に運用する文化を作ることが重要です。

算出された高精度な需要予測の数値をベースとして、在庫状況や注文状況からシステムが自動で最適な発注量を割り出す「自動発注・調達の仕組み」へ連携します。予測システムを導入して終わりではなく、予測の次工程にある業務システム全体の最適化を目指す必要があります。

具体的には、 需要予測システムで「需要量」を予測した後、以下のステップで在庫管理の業務効率化を進めます。

  1. 予測値の自動連携:予測された需要量を、既存の発注・基幹システムへ自動で取り込む。
  2. 発注ルール(安全在庫)の策定:予測モデルが提示する需要量に対して業務制約を勘案し、最適な在庫削減と欠品防止を両立する発注ロジックを組む。
  3. 継続的な改善:需要は時間と共にトレンドが変動するため、予測モデルの精度が劣化した際に、継続的にモデルを改善するためのPDCAサイクルを実装する。

需要変動が激しい商品では、次々とリリースされる新商品や市場環境の変化に対し、多様な変数を素早く試行錯誤しながらモデルを改善し続けることが不可欠です。

dotDataを活用した需要予測の強みは、この高速な試行錯誤を可能にする点にあります。専門知識がなくても現場の仮説に基づいた変数を素早くモデルに反映・検証できるため、予測が難しい商品群に対しても柔軟にアップデートし続けることが可能です。具体的には、以下の課題を持つ商品群において、dotData独自のAIによる需要予測ソリューションが大きな効果を発揮します。

  • シーズン品(アパレルなど):定番色とトレンド色のカラーバランスや、サイズ構成による需要予測の精度向上。
  • 特売品・プロモーション品:過去のデータから、値引き率や露出度が需要量に与える影響をディープに分析し、在庫の最適化を実現。
  • 返品リスクの高い商品:予測的中率を極限まで高めることで、倉庫を逼迫させる過剰在庫の発生や、欠品による機会損失を同時に防ぎます。

高度なプログラミングや統計学の知識を必要とせず、特徴量を自動設計できるノーコード・ローコード型の需要予測システムを選定すれば、専門職がいない現場でも十分に内製化は可能です。専門知識のない担当者が、自らの現場の知見(ドメイン知識)を活かしてデータを投入し、予測モデルを構築・運用できるツールが現在の主流となっています。

現場主導で需要予測システムを運用(単独稼働)させるためのポイントは以下の通りです。

  • 予測プロセスの可視化:AIの導き出した理由が画面上で一目でわかるツールを選ぶこと。
  • 業務に即したマスターデータの整備:商品企画の段階からカラーの呼び方やサイズ表記などのマスターを統一・整備し、AIが学習しやすいデータ環境を作ること。
  • スモールスタートと横展開:まずは予測のパターンが掴みやすい特定の領域からスタートし、成功事例を作った後に、予測モデルの共通化が難しい複雑な領域へと段階的に横展開していくこと。