コンビニエンスストア「ローソン」を全国で展開し、多彩な顧客ニーズにも柔軟かつ迅速に応えるローソン。購買履歴と会員別の価値観情報をベースとした「価値観に基づいたターゲティング」の実現に向けて、AIや予測分析を駆使したさまざまな取り組みを進めています。ローソンの小林敏郎氏は「データから購買者の価値観を高い精度で把握することで、個人の価値観に合わせた商品の推薦や、店舗の改善、小売店だからこそ得られる購買者のデータを活用してメーカーの商品開発や販促活動の支援にも役立てています」と説明します。
この施策は、2015年頃からスタートしました。「小売業において、商品の評価は主に販売数で判断されます。時間をかけて優れた新商品を開発しても、上手く売れないと評価されず、購買者に認知される前に終売になってしまい、非常に悔しい思いをしていました」と小林氏は当時を振り返ります。
「価値観に基づいたターゲティング」とは、膨大なデータから購入者の価値観を抽出した購買販売モデルにより、購買者の価値観と、商品の購買の関係を学習することで、クーポンのデザインや配信、販促、商品開発強化につなげる仕組みです。具体的には、ローソングループが持つ膨大な購買履歴および商品情報などのデータから、購入者の行動や特徴を抽出し、クラスター分析によって、購入者の価値観を抽出分類します。同じ年代・性別でも求めるものがさまざまな要素で変わるため価値観で分けることが重要になるのです。例えば「ご褒美女子型」と名付けた価値観では、「若年層の女性が中心で、自分自身に関心が強く、自分へのご褒美を重視している」といった特徴があります。
価値観は、複数の因子から構成されています。これまでの課題はID-POSや商品マスタ群、価値観分類を含む会員マスタ群などさまざまなデータソースから、分析に必要な項目を精査しデータマートとして整備することでした。データマートの整備は基本的に人の手で職人的に行う必要がありました。この作業に大きな工数がかかり、価値観と購買の関係という最も重要な分析になかなか手が回せない状況に陥ってしまったのです。「データマートは、データの変化や、新しいデータの追加、新しい商品のトレンドなど、一度作成したら終わりではなく、継続的にメンテナンスをする必要があります。ターゲティングをより多くの商品へと拡大していく必要がある一方で、外部のデータサイエンティストへ委託すると、柔軟な対応が難しく、またコスト面も課題でした」(小林氏)
そこで小林氏は、これらの課題を解決するための打開策を模索。その解決の糸口となったのが、データマートを自動生成し独自のAIによって特徴量抽出を自動化する「dotData」です。