日本ゼオン株式会社 マテリアルズインフォマティクスを加速させる研究開発の新しいインフラ - dotDataの全社展開
日本ゼオン株式会社

マテリアルズ・インフォマティクスを加速させる研究開発の新しいインフラ - dotDataの全社展開

業界:製造業
ソリューション:研究開発支援 品質改善 製造プロセス効率化

独自の技術力を強みとする化学メーカー・日本ゼオン株式会社は、新素材開発や既存製品の改善、工場の生産効率向上を目的にdotDataを導入しました。特徴量抽出の精度の高さに加え、使いやすさとわかりやすいアウトプットで、現場研究員のAI活用リテラシーは大幅に上昇。今後はさらに「コト売り」といった領域にも、dotDataをはじめとする機械学習ツールの展開を検討していきます。

課題

  • データ解析業務にかかる工数が多く、またスピードも十分ではない
  • 研究開発の質とスピードを高めるためのAIの活用ができる研究員は希少
  • データ解析の要望が増加し、データサイエンティストの基礎的なデータ整理の負荷が増大

ソリューション

統計解析とGUI により、dotData は大規模データ分析のハードルを下げる

効果

  • 工場の不良率低減に向け約1500のセンサーを解析。1/100の工数で、不具合箇所を特定できた
  • 研究員のAI活用リテラシーが向上し研究開発力を強化
  • 基礎的なデータ解析をdotDataが代替することで、データサイエンス担当者の高付加価値業務が拡大

お客様の声

小野 裕己氏
日本ゼオン株式会社 総合開発センター 基盤技術研究所 所長 博士 (理学)

小野 裕己氏

当たり前にある業務スキルとして、“読み書き・そろばん・AI”と並べることができるでしょう。AIの位置を占める代表が、dotDataなのです。研究員の気付きを促す環境ができ上がりつつあると感じています。

長岡 正宏氏
日本ゼオン株式会社 総合開発センター 基盤技術研究所 物性解析グループ 博士 (工学)

長岡 正宏氏

『次はこういうデータが必要だ』といった議論が、dotDataの存在を前提にして、できるようになりました。dotDataは“データ民主化”の起爆剤になっています。

代田 陸氏
日本ゼオン株式会社 総合開発センター 基盤技術研究所 物性解析グループ

代田 陸氏

AIの専門知識がない現場の人こそ活用できると実感しました。業務担当者の知見が結果に反映されることで、より深い洞察が得られています。

世木 隆氏
日本ゼオン株式会社 総合開発センター 基盤技術研究所 物性解析グループ長 博士 (理学)

世木 隆氏

dotDataの活用によって現場のリテラシーが高まることで、データが量・質ともに拡充され、それがより精度の高い解析につながるという好循環が見込めます。

名取 慧氏
日本ゼオン株式会社 総合開発センター 基盤技術研究所 物性解析グループ 博士 (理学)

名取 慧氏

効率の面でも精度の面でも、従来型のデータ解析では到達できない結果に驚きました。センサー数を低減できれば、大きなコストダウンにもつながるものと期待しています。

高精度なデータ解析が、研究開発力をさらに強化

日本ゼオン株式会社は、1950年の設立以来、日本で初めて合成ゴムの量産化に成功するなど、独創的な技術で優れた製品を生み出してきました。現在は、合成ゴムや合成ラテックスなどのエラストマー素材事業、高機能樹脂・部材、電子材料、電池材料、化学品、医療器材を扱う高機能材料事業など、事業を多角化。顧客企業には世界有数の大手メーカーが名を連ねます。

幅広い事業を展開し、どの領域でも顧客から高い信頼を得ているその根底には、同社の厚みある研究開発力があります。同社の総合開発センターには19の研究所・室があり、約400名が研究開発に従事。その中で、データサイエンスを通じて各研究所や工場の業務を支えているのが、基盤技術研究所(以下、基盤研)です。

所長の小野裕己氏は、「新素材を開発する、顧客の要求にジャストミートするよう既存の製品を改善する、あるいは工場の生産効率を高めるための環境整備をする―そうした課題の解決に向け、AIやIoTを駆使してサポートするのが、私たちの使命です」と説明します。

材料開発研究の質とスピードを高める施策の一環として、基盤研では2017年ごろから、実験やシミュレーションの結果を、情報科学の手法や機械学習を用いて解析して素材開発に活かす「マテリアルズ・インフォマティクス」に取り組んできました。しかし、その過程でいくつかの課題に突き当たりました。

1つは、データの収集・解析には高度な専門性が問われること。他の研究所や工場など現場からの解析依頼は年間数十件に上り、その度に基盤研の研究員がデータの収集・整理を支援し、さらに手作業でデータの解析を行ってきました。その結果、基盤研の研究員の負担が増加し、メインミッションである高度な解析業務に十分な時間を割けないケースが増えていました。

もう1つが、手作業では膨大な変数に対応しきれないこと。小野氏は、「主剤・添加剤・充填剤などさまざまな配合を持つ複雑な材料の解析では、変数の組み合わせが数千にもおよびます。手作業による解析に限界がありました」と明かします。

現場の社員たちが自ら解析を進めることができるAIエンジンが必要とされていましたが、複雑なプラットフォームでは現場への展開が見込めません。精度と手軽さを高いレベルで統合できるAIエンジンはないか。こうした課題意識のもと、基盤研が注目したのがdotDataでした。

かかる時間は100分の1。飛躍的な効率改善でコストも削減

かかる時間は100分の1。飛躍的な効率改善でコストも削減

dotDataはコーディングなしで解析を自動化できるため、使い方さえマスターすれば、現場の担当者でも自力でデータ解析ができます。dotData独自の特徴量の自動抽出によって、膨大な変数でも容易に対処できる点も高く評価されました。

基盤研・物性解析グループの名取慧氏は「ユーザーインターフェースのわかりやすさも魅力でした」と語ります。

「解析の主役は、実際に実験する研究員です。通常のAIエンジンは結果がブラックボックス化して因果関係が解釈しづらく、手を動かして実験してみようという気になりません。dotDataが示すデータは説明性が高く解釈しやすいため、研究員も納得できる。この点も重視しました」

dotDataを活用した成功事例の1つに、不良率低減を目的とした工場のセンサーのデータ解析があります。工場には約1500のセンサーがありますが、dotDataは問題箇所をわずか数個のセンサーにまで絞り込んだといいます。

「しかも、かかった時間は手作業と比べて100分の1程度。効率面でも精度面でも、従来型のデータ解析では到達できない結果に驚きました。これを活用することでセンサー数を低減できれば、大きなコストダウンにもつながります」(名取氏)

また、汎用ゴムの製造過程の解析でも、トレンドデータで温度がわずかに落ちる瞬間があることをdotDataが示し、製造工程の改善に向けた気付きが得られたといいます。

基盤研・物性解析グループの代田陸氏は、dotData導入前に手作業で実施していた、混錬データの解析をdotDataで分析したところ、同様の精度で特徴量が抽出できたと振り返ります。

「AIの専門知識がない現場の人こそ活用できると実感しました。業務担当者の知見が結果に反映されることで、より深い洞察が得られています」(代田氏)

現場のAIリテラシーを底上げ。AI・データ活用の好循環を促進

dotDataは全社で利用可能な状態であり、AI活用のリテラシーが底上げされているとのこと。基盤研の長岡正宏氏は、データ活用の共通言語としても、dotDataが機能していると指摘します。

「『次はこういうデータが必要だ』『こんなデータがあれば精度がより高まるのでは』といった議論が、dotDataの存在を前提にして、できるようになりました。導入前、データの収集・整理からわれわれがサポートしなければならなかった状況を思えば、雲泥の差。dotDataが“データ民主化”の起爆剤になっているのは間違いありません」

基盤研・物性解析グループ長・世木隆氏も、「現場のリテラシーが高まることで、量・質ともにデータベースのいっそうの拡充が期待できるでしょう。となれば、より精度の高い解析が実現できることになり、dotData活用の好循環が見込めます」と語ります。

小野氏はdotDataをインフラとして位置付けていると述べます。「当たり前にある業務スキルとして、“読み書き・そろばん・AI”と並べることができるでしょう。AIの位置を占める代表が、dotDataなのです。研究員の気付きを促す環境ができ上がりつつあると感じています」

データ活用人材の広がりを基盤に新事業に挑む

データ活用人材の広がりを基盤に新事業に挑む

dotData導入によって、基盤研の面々もメインミッションである高度な解析業務に注力できる環境が整いつつあります。

その1つが、CO2削減に向けた取り組みです。

「当社のカーボンニュートラルのポリシーに基づき、工場ではCO2排出量の推定および削減が取り組まれています。工場特有の不揃いで膨大なデータに対してもdotDataは一定の方針を示すので、一つずつデータを確認する手間を大きく減らしてくれます。CO2に関するデータ分析の潜在的な需要は各所にあるため、個人的にはdotDataの高速・高品質な分析を適用することで取り組みを加速させたいと考えています」(名取氏)

もう1つが、情報という無形資産を収益の柱とする「コト売り」です。同社は設立以来、モノを商材としてきました。その専門性を見越して、革新的な製品を開発したいと考える顧客企業から、原材料や製造方法の問い合わせが寄せられます。それを発展させた先にあるのが「コト売り」です。

「現状では研究員が知識や経験、あるいは社内の技術報告書などを元に答えを探り、手掛かりがなければ自分で検証して対応しているのですが、ここにdotDataをはじめとする機械学習ツールが活用出来るのではないかと期待しています」と小野氏。

長岡氏は、「お客様企業のタイトな開発スケジュールに合わせるには、迅速な対応が求められます。モノを売る企業として蓄積してきたデータをうまく使いつつ、まずはdotDataでファーストアンサーを提示するわけです。われわれの培ってきた豊富な知見に、“スピード”を価値として加え、お客様の事業に貢献したいですね」と展望を語ります。

さらに小野氏は、理論づくりの重要性も強調。「dotDataの示唆の背後には、物理と化学のサイエンスモデルがあります。そこをきっちり補強してデータと組み合わせれば、dotDataのエンジンがより強化されるはず。研究力が向上することで、お客様からの依頼にもより高度な知見で対応できるようになるでしょう」

開発競争における、同社がもつ競争力の源泉として、dotData活用の場が、ますます広がっていくことが見込まれます。

日本ゼオン株式会社

https://www.zeon.co.jp/
所在地 〒100-8246 東京都千代田区丸の内1-6-2 新丸の内センタービル
従業員数 4,462名(連結ベース、2024年3月末現在)
創業日 1950年4月12日
事業内容

エラストマー素材事業(合成ゴム、合成ラテックス、化成品)、高機能材料事業(高機能樹脂・部材、電子材料、電池材料、化学品、医療器材)のほか、CNT事業、RIM配合液・成形品、塗料などの販売などを手掛けている。

AI活用事例

横浜ゴム株式会社

「人とAIの協奏」で目指すものづくり革命
dotDataで、タイヤの性能と開発・製造プロセスを改善

株式会社JALエンジニアリング

「遅延・欠航ゼロ」を目指して
dotDataの特徴量が故障予測分析を高度化