── かねてからセブン銀行はAI・データ活用に力を入れています。どのような成果につながっていますか。
中村氏:成功事例として、過去のATM利用実績を分析して、ATMの中にある現金の増減を予測し、ATMの現金管理の最適化に役立てていることなどを紹介してきました。さらに活用が進み、より多くの業務でAIやデータを利用するようになっています。例えば、金融機関ならではの業務である与信審査もAI・データ活用による成果を上げています。セブン銀行が提供している後払いサービスの与信審査は、以前は外部委託などで対応していたのですが、いまは、その一部をAIやデータを駆使して当社のデータサイエンティストが行っています。
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── 最近では、カードローンの与信審査に購買データを活用する取り組みも大きな話題となりました。
中村氏:セブン銀行が提供するカードローンの与信審査に、セブン&アイHDが提供するグループ共通の会員IDに紐づいて蓄積されたデータを活用するものです。期間限定ですが、従来の与信審査の判断基準に加えて、共通会員IDに紐づく購買データを活用した与信審査を追加で行いました。これまでの与信審査では残念ながらお借入れできなかったお客様にも、サービスをご利用いただける可能性が広がります。このように、セブン&アイグループが保有する購買データと当社の金融データの組み合わせによって、新しい金融商品の開発にもつなげられると考えています。
── 購買データを利用するというアイデアは、どのように生まれたのでしょうか。
中村氏:購買データを活用したいという思いは、かなり以前からありました。資産状況や取引履歴などの金融データに比べると購買データは生活スタイルや価値観が表れやすく、より深くお客様を理解できると考えられるからです。
他社が同様の取り組みにチャレンジしたものの、さまざまな課題に直面したという話も聞いていましたが、当社なら成功させられると確信していました。一般的に金融機関が利用している購買に関係するデータの多くは、クレジットカードの決済データが中心。その場合、すぐにわかるのは、いつ、どのお店で、いくらの買い物を行ったかまでで、何を買ったかまでは情報が蓄積されず、推測するのも難しいことが多いのではないでしょうか。
一方、共通会員IDに紐づく購買データは違います。ご存じの通り、セブン&アイグループは、食品、飲料、書籍や雑誌、文房具、化粧品など、さまざまな種類の商品を扱っています。いつ、どの商品を、どのような組み合わせで購入したか ──。その購買データは、まさにお客様の生活スタイルや価値観そのもの。お客様を深く理解する上で、これ以上のデータは、そうありません。