JFEスチール株式会社

dotDataによる品質リスク要因探索でハイテン鋼製造の歩留まり改善を実現

業界:製造業
ソリューション:歩留まり改善 品質改善 製造プロセス効率化

強度と軽量化を両立するハイテン鋼は、サステナブルな社会の実現に大きな役割を果たすと期待されています。一方で、製造条件の変化に影響を受けやすいその性質は、品質の安定化と歩留まり改善の大きな壁となっていました。JFEスチールは、dotDataが生成する特徴量から得られた新たな知見を手がかりに、継続的な製造プロセスと歩留まりの改善を実現。エンジニアたちによる未来を見据えた技術革新を進めています。

課題

  • ハイテン鋼の品質と歩留まりの改善
  • 次世代超ハイテン鋼製造技術の確立と改善
  • 製造現場で収集する膨大なデータの活用

ソリューション

歩留まり 改善

効果

  • dotDataの特徴量自動設計技術で潜在的な品質リスクを可視化し、ハイテン鋼の工程最適化と品質管理の強化に貢献
  • ハイテン鋼製造の歩留まりを大幅に向上させ、自動車メーカーへの安定供給体制を強化

お客様の声

金子 陽平氏
JFEスチール株式会社 東日本製鉄所 (千葉地区) 商品技術部 薄板室 主査

金子 陽平氏

dotDataはハイテン鋼開発の常識を覆す特徴量を発見しました。それに着目できたのは、私自身が専門家ではなく、意外な結果も先入観なく受け止められたからだと感じています。データに基づく意思決定は、製造業にとって今後さらに大きな意味を持つと確信しています。

試行錯誤を繰り返した超ハイテン鋼の開発と
歩留まり改善への挑戦

試行錯誤を繰り返した超ハイテン鋼の開発と歩留まり改善への挑戦

強度と軽量化を両立するハイテン鋼は、サステナブル社会の実現に必要不可欠な存在の一つです。自動車メーカーに課された燃費規制を乗り越えるために求められる車体軽量化への貢献は、その分かりやすい例です。強度を保ちながら薄板化できるハイテン鋼は、自動車の軽量化と安全性の両立に欠かせない素材なのです。JFEスチール株式会社(以下、JFEスチール)東日本製鉄所(千葉地区)は、東日本に製造拠点を置く自動車メーカー各社にハイテン鋼を供給するほか、超ハイテンと呼ばれる、より軽量で高硬度な製品の開発にも取り組んでいます。

強度と軽さの両立という優れた特徴の一方で、ハイテン鋼は従来の汎用鋼材と比べ、製造条件の微妙な変化が品質に大きな影響を与えます。この従来の鋼材にはない性質は、ハイテン鋼の安定的な生産や超ハイテン開発に向き合うエンジニアたちにとって大きな課題になっていました。自動車メーカーなどの顧客各社の声に耳を傾け、ニーズに応じたハイテン製品開発に取り組み続ける商品技術部 薄板室 主査の金子 陽平氏は、次のように説明します。

「大量生産を前提とする製鉄業では早くから統計的手法に基づく技術革新が図られ、私自身も以前からハイテン綱のデータ分析に取り組んできました。当然、ハイテン鋼の開発でもデータ解析は大きな役割を担っていますが、これまでのやり方では、各種センサーの増設によるデータ量の飛躍的な増大や、ハイテン鋼に対応したより緻密な解析は困難になりつつありました。現実問題として、汎用表計算ソフトで作成した数百枚の散布図からなんらかの相関を見出すのは難しいというのが正直なところです。ハイテン鋼の歩留まり改善や新製品開発において、私たちエンジニアはデータ活用の難しさに直面していたのです」

これまでの常識を覆した
dotDataの特徴量

JFEスチールでは、膨大なデータを基にサイバー空間上に現実世界を再現し、稼働状況の可視化や故障予測、生産シミュレーションなどを行うことで、効率的な操業を支援するサイバーフィジカルシステム(CPS)の導入・展開を進めています。また、データ分析の全社標準ツールを整備することで、より多くの従業員がデータに基づいて判断できる環境の整備を推進しています。こうした中、金子氏が注目したのは、全社標準ツールの一つとして採用されたdotDataによる特徴量自動設計技術でした。

「課題解決にあたって我々エンジニアは、これまでの知識や経験である程度のあたりをつけ、変数を絞り込んだうえで要因解析を行うことが一般的です。しかしこの方法論は、従来の鋼材と異なり、長年のノウハウの蓄積がない新たな技術であるハイテン鋼には必ずしも有効に機能していませんでした。dotDataを活用してみようと考えた背景には、我々が見落としてきた新たな気付きが発見できるのではないかという大きな期待がありました」

実際、dotDataの活用は、これまで見落とされてきたさまざまな気付きにつながりました。その一例が、焼鈍工程における新たな知見の発見です。

「ハイテン鋼に限らず、一般的な鉄鋼の冷延コイル製品では、製鋼工程で精錬された粗鋼を、熱いうちに熱間圧延で所定のサイズまで圧延した後、酸洗や冷延圧延という工程を通して最終製品の直前の工程とも言える焼鈍工程に至ります。この焼鈍工程は、一定の温度まで鋼板を加熱したあと、冷却するプロセスを通して、結晶組織を制御し、用途に応じた所定の特性値を実現するための工程です。製鉄プロセスはこのように複数のプロセスを経て最終製品に至るため、各プロセスでの要因が複合的に関係することで最終製品の特性に影響を与えることが品質を一定に保つことを複雑にすることの一つの理由でした。この複数のプロセスの膨大なデータを活用してdotDataの特徴量分析を通した結果、従来は気が付かなかった複数の要因による相関関係が発見され、ハイテン鋼のような新たな特性を必要とする製品には、既存の管理項目(またはセンサー)のみでは十分とは言えないということを実感しました。これらの相関関係は、従来の汎用鋼種での製造では常識とは言えなかったことであり、これがdotDataによって相関が確認されたことは、大きな驚きでした」

今回、dotDataから得られた新たな知見は、ビジネスの観点でも大きな成果につながっています。

「自動車メーカーとの取引では、決められた納期に、決められた資材や部品を確実に届けることがビジネスの前提条件です。これまでは、一定の在庫を常時確保することで製造工程の様々なリスクによる生産の遅れに対応してきましたが、dotDataが発見した新たな知見に基づく歩留まり率の大幅な向上は、在庫量の削減や利益率の向上に確実に貢献しています。さらに言えば、サステナブル社会の実現に求められるハイテン鋼の安定的な供給という、私たちに託された社会的役割を果たすうえでも大きな一歩になったと考えています」

求められるのは先入観なく
データに向き合う姿勢

求められるのは先入観なくデータに向き合う姿勢

より高度なデータ利活用を、データ分析の専門部署ではなく現場のエンジニアの手で行えることも金子氏がdotDataを高く評価するポイントです。

「弊社では、データサイエンティストによる高度なデータ分析も並行して行っていますが、各データの具体的な性質までは把握できないため、解析結果の詳細な解釈や偽相関の可能性まで踏み込んだ分析を行うのは難しいのが実情です。その結果、何度もやりとりが必要になり、スピード感のある意思決定は難しくなっていましたが、dotDataを活用した現場エンジニアによるデータ利活用は、より迅速な意思決定に大きな役割を果たすのではないかと期待しています」

また、dotDataの特徴量をヒントとして生かすうえでは、先入観なく特徴量に向き合う姿勢が大切になるのではないかと金子氏は指摘します。

「私の場合、現職以前は、主に製鉄の実際の製造部署に所属してきた経歴が長く、市場ニーズに応じた製品開発のために、特性値から全製造プロセスに渡る作り込み技術に取り組むことは初めての経験でした。未経験の難しさはありましたが、それ故に既存の知識にのみ捕らわれずdotDataの特徴量に注目できたのではないかとも思っています。また、今回の成果については、たとえ経験の浅い社員の意見であっても、それがデータに基づくものであれば必ず耳を傾ける弊社の企業文化も大きな役割を果たしています」

dotDataを始めとしたデータサイエンス活用の様々な成果は社内でも高く評価され、JFEの西日本製鉄所に新設されるハイテン鋼の製造ラインにおいてもその知見が生かされる予定です。そして、その先に同社が見据えるのが、全社的なデータ基盤の統合によるビッグデータ利活用促進です。

「弊社は、インテリジェンス製鉄所の実現という目標の第一歩として工場単位・設備単位で管理してきたデータのクラウドによる統合を図っています。それと並行し、CPS実現に向け、よりきめ細かなデータ収集にも積極的に取り組んでいく考えです。こうした膨大なデータに誰もがアクセスできる環境の実現は、現場エンジニアによるdotData活用のさらならなる進化にも確実につながると考えています」

JFEスチール株式会社

https://www.jfe-steel.co.jp/
所在地 〒100-0011 東京都千代田区内幸町2-2-3 日比谷国際ビル
従業員数 41,386名(連結、2025年3月末現在)
創業日 2003年4月1日
事業内容

JFEスチールは高炉を所有し、鉄鉱石を原料に最終製品の生産までを一貫して行う鉄鋼メーカーである。国内4カ所に製造拠点を構え、世界トップクラスの鉄鋼生産規模を持つ。最先端の環境調和型製鉄プロセスの構築や、高機能鋼材の開発を通じて、製造工程はもとより製品においても環境負荷の低減に貢献している。

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