強度と軽量化を両立するハイテン鋼は、サステナブル社会の実現に必要不可欠な存在の一つです。自動車メーカーに課された燃費規制を乗り越えるために求められる車体軽量化への貢献は、その分かりやすい例です。強度を保ちながら薄板化できるハイテン鋼は、自動車の軽量化と安全性の両立に欠かせない素材なのです。JFEスチール株式会社(以下、JFEスチール)東日本製鉄所(千葉地区)は、東日本に製造拠点を置く自動車メーカー各社にハイテン鋼を供給するほか、超ハイテンと呼ばれる、より軽量で高硬度な製品の開発にも取り組んでいます。
強度と軽さの両立という優れた特徴の一方で、ハイテン鋼は従来の汎用鋼材と比べ、製造条件の微妙な変化が品質に大きな影響を与えます。この従来の鋼材にはない性質は、ハイテン鋼の安定的な生産や超ハイテン開発に向き合うエンジニアたちにとって大きな課題になっていました。自動車メーカーなどの顧客各社の声に耳を傾け、ニーズに応じたハイテン製品開発に取り組み続ける商品技術部 薄板室 主査の金子 陽平氏は、次のように説明します。
「大量生産を前提とする製鉄業では早くから統計的手法に基づく技術革新が図られ、私自身も以前からハイテン綱のデータ分析に取り組んできました。当然、ハイテン鋼の開発でもデータ解析は大きな役割を担っていますが、これまでのやり方では、各種センサーの増設によるデータ量の飛躍的な増大や、ハイテン鋼に対応したより緻密な解析は困難になりつつありました。現実問題として、汎用表計算ソフトで作成した数百枚の散布図からなんらかの相関を見出すのは難しいというのが正直なところです。ハイテン鋼の歩留まり改善や新製品開発において、私たちエンジニアはデータ活用の難しさに直面していたのです」