次に注目したのが、品質予測のAIによる自動化です。ビール醸造では原材料である穀物の状態などに応じ、多様なパラメーターを調整しビール成分が一定条件に収まる製品製造が求められます。そのプロセスは技能者の経験と勘に頼るほかありませんでした。品質予測の自動化に関する実証実験では、全社的なAI基盤として運用中のサービスを含めた各社AI基盤の比較検討も同時に実施しました。その1つとして同社が注目したのがdotDataでした。
「dotDataに注目した理由は、既存AI基盤と異なり、複数の特徴量の掛け合わせによる説明が可能になることです。項目ごとに評価するのではなく、例えば『原材料がXで温度がYになると品質異常が発生しやすい』という説明ができることで、現場の理解もより深まるはずと考えました。また、直感的に理解できるUIも他社製品にないものでした」さらに大塚商会のSecond Opinion Serviceを利用することで、自社のエンジニアリソースを割かずに実証実験が行えたことも比較検討の弾みになったといいます。 大塚商会をパートナーにしたdotDataの実証実験は、そのほか2つ実施されました。
1つは製造工程における排水量および排水負荷予測の自動化です。大量の水を利用するビール製造では、排水処理も重要です。工場には微生物の働きで排水を浄化する処理施設が併設されていますが、その運用には、微生物の餌である排水の濃度や量の調整が求められます。ベテラン技能者の経験と勘に頼ってきた処理施設の運用を、製造実績や用水、蒸気使用量データに基づいてAIが自動化する効果が検証されました。
もう1つが冷凍設備の故障予知です。ビール製造では発酵中の温度管理用の冷水を用意する大型の冷凍装置が不可欠です。異常管理には以前からAIモデルを利用していますが、部品交換直後の閾値の変化は重要な課題になっていました。dotDataの高度なAIモデル構築の効果を検証することがその狙いでした。