日本を代表するタイヤメーカーとして、国内はもとより海外でも広くその名を知られる横浜ゴム。一般乗用車用からモータースポーツ用タイヤ、高いシェアを誇るスタッドレスタイヤといった各種タイヤ製品のほかにも、タイヤホイール製品やゴルフ関連製品、工業品・航空部品などの分野でも幅広く事業を展開しています。同社は、主力製品であるタイヤの研究開発や設計、製造などの業務において、早くからデータ分析やAIの技術を活用してきました。マルチスケール・シミュレーションなどのシミュレーション技術や「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」などのAI技術を用いた材料開発に取り組んできたほか、2020年には「HAICoLab(ハイコラボ)」というAI利活用構想を立ち上げ、より一層AIやデータ分析の活用に注力しています。
これらの施策について、横浜ゴムのAI研究室で研究室長を務める小石正隆氏は次のように説明します。「AIで業務をどんどん自動化することよりも、人の良さとAIの良さをうまく掛け合わせた『人とAIの協奏』による課題解決を目指しています。課題解決のアクションに繋がる道筋となる仮設を設定し、AIやデータ分析で得られた情報に人が解釈を加えます。そこでの気づきやひらめきをうまく活用することによって、継続的に技術を磨き上げていく『漸進的イノベーション』と新たな発想に基づいた『急進的イノベーション』の両方をにらみながら技術革新を進めていきたいと考えています」この目的を果たすために、AI活用においても単にディープラーニングで予測モデルを構築するだけでなく、データと予測値との間の関係性を人が理解できるかたちで導けるよう、さまざまな工夫を凝らしてきました。