三井住友海上は、損害保険グループ国内シェアNo.1のMS&ADインシュアランスグループの損害保険会社の1つとして日本全国に多数の拠点を置くほか、近年はアジアを中心に全世界41カ国に拠点を展開するなどグローバルビジネスにも力を入れています。現在は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を全社的に推進しており、最新テクノロジーをいち早く業務に取り入れる先進性において、損保業界を常にリードし続けています。そうした同社の取り組みの1つに、損保業界として初めてAIを搭載した代理店営業支援システム「MS1 Brain」があります。
これは、保険代理店向けに提供している業務支援システム「代理店MS1」の追加機能として2020年2月から提供を始めたものです。過去7年間の契約情報や顧客情報などをAIが分析し、「どの顧客にどのタイミングでどんな商品を提案するべきか」を代理店の営業担当者に提案する仕組みです。MS1 Brainの開発に至った背景について、同社でこの企画を先導した松村隆司氏は次のように語ります。「新たな顧客体験を創造するためには、お客さまについてより深く知る必要があります。従来は代理店の営業担当者の経験と勘に頼ってきましたが、よりパーソナライズされた体験を提供するにはデータをより科学的に分析・理解・活用することが必要です。当社が蓄積する大量のお客さまに関するデータを分析するために、AIの導入が不可欠であると判断しました」
一方、AIを導入・活用する上で最大の障壁となったのが「人材」に関する課題でした。三井住友海上には保険商品の設計やリスク分析を担うアクチュアリーは多く在籍しているものの、データサイエンティストを擁する部門を組成して間もなく、どうしても社外のデータ分析人材に頼らざるを得ませんでした。