三井住友海上火災保険 AI活用事例 dotData
三井住友海上火災保険株式会社

AIがパーソナライズした保険で成約率が3倍に
「現場が使えるAI」でデータドリブンな企業文化へ

業界:保険業界
ソリューション:販売商品数・単価向上 アップセル・クロスセル成約率向上

三井住友海上火災保険(以下、三井住友海上)は 2020年2月、日本全国で約3万8000の保険代理店の営業活動をAIで支援する仕組みとして「MS1 Brain」をリリースしました。そこで使われるAIモデルの設計・構築を効率的に行う手段としてdotDataを採用。これによりデータサイエンティストの数が限られているなかでも、AIモデルの精度を維持することが可能となりました。さらにdotDataは、自社にとどまらないさまざまなビジネス効果を生み出しています。

課題

  • 代理店を通じてパーソナライズされた顧客体験の提供
  • データ分析人材の不足とデータ分析ノウハウの蓄積不足
  • ブラックボックス化されたAIの結果解釈と業務適用

ソリューション

効果

  • MS1 Brainが特徴量に従い保険を提案することでアップセル・クロスセル成約率が3倍増
  • 海外パートナー連携など自社にとどまらないビジネスへ発展
  • dotDataの「中身のわかる AI」で社内DXが大きく加速

お客様の声

松村 隆司氏
三井住友海上火災保険株式会社 ビジネスデザイン部 データサイエンスチーム シニアアドバイザー

松村 隆司氏

dotDataの特徴量を通じた営業活動や顧客接点におけるデータの有効性が実感できたことで、データドリブンな発想を持つ風土が醸成されつつあり、社員・代理店のDXが飛躍的に進んでいます。

和食 昌史氏
三井住友海上火災保険株式会社 ビジネスデザイン部 データサイエンスチーム長(上席)

和食 昌史氏

生命保険や火災保険に加入見込みの高いお客さまをスコアリングし、より見込みの高いお客さまに提案することで代理店活動の効率化とともにお客さま満足度の高い提案を実現できました。また、保険契約の解約や他社への切替意向の高いお客さまを抽出することで、解約・切替抑止のための活動に早期に取り掛かれるようになりました。

桑田 修平氏
三井住友海上火災保険株式会社 ビジネスデザイン部 データサイエンスチーム課長(データサイエンティスト)

桑田 修平氏

弊社のAI活用においては、主役はあくまでも人で、AIは人をサポートする道具として位置付けていましたから、やはり中身を人が見て理解できることを重視していました。その点、dotDataは『特徴量やプロセスが見える』という、当時としては画期的な特徴を備えていました。

保険代理店の営業活動をAIで支援する「MS1 Brain」

三井住友海上は、損害保険グループ国内シェアNo.1のMS&ADインシュアランスグループの損害保険会社の1つとして日本全国に多数の拠点を置くほか、近年はアジアを中心に全世界41カ国に拠点を展開するなどグローバルビジネスにも力を入れています。現在は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を全社的に推進しており、最新テクノロジーをいち早く業務に取り入れる先進性において、損保業界を常にリードし続けています。そうした同社の取り組みの1つに、損保業界として初めてAIを搭載した代理店営業支援システム「MS1 Brain」があります。

これは、保険代理店向けに提供している業務支援システム「代理店MS1」の追加機能として2020年2月から提供を始めたものです。過去7年間の契約情報や顧客情報などをAIが分析し、「どの顧客にどのタイミングでどんな商品を提案するべきか」を代理店の営業担当者に提案する仕組みです。MS1 Brainの開発に至った背景について、同社でこの企画を先導した松村隆司氏は次のように語ります。「新たな顧客体験を創造するためには、お客さまについてより深く知る必要があります。従来は代理店の営業担当者の経験と勘に頼ってきましたが、よりパーソナライズされた体験を提供するにはデータをより科学的に分析・理解・活用することが必要です。当社が蓄積する大量のお客さまに関するデータを分析するために、AIの導入が不可欠であると判断しました」

一方、AIを導入・活用する上で最大の障壁となったのが「人材」に関する課題でした。三井住友海上には保険商品の設計やリスク分析を担うアクチュアリーは多く在籍しているものの、データサイエンティストを擁する部門を組成して間もなく、どうしても社外のデータ分析人材に頼らざるを得ませんでした。

AIのブラックボックス化を回避できる仕組み

もちろん、社内でデータサイエンティストを育成する施策も始めてはいましたが、高度なスキルを備えた人材を育成するにはどうしても時間を要します。こうした人材に関する課題について、同社のデータサイエンスチーム長を務める和食昌史氏は次のように話します。「外部の人材に依存しすぎると、その人たちがプロジェクトから離れた後にスキルが社内に残らず、やがてシステムを維持できなくなってしまう懸念がありました。そのため、データサイエンティスト人材を中途採用したり社内の人材育成施策を強化したりしましたが、同時に社内のスキル不足を補う手立ても講じる必要もあると考えていました」そんな折、さまざまなAI製品に関する調査を続ける中で出会ったのが、「dotData」でした。dotDataはAIモデル設計・構築作業の大部分を自動化してくれるため、三井住友海上が抱えていた「データを扱える人材の不足」や「人手による運用の限界」などの課題を解決してくれるのではないかとの期待がありました。

そしてもう1つ、同社がdotDataに注目したポイントが、特徴量を自動で設計してくれるとともに、その内容を人が解釈できる形で分かりやすく提示してくれる機能です。同社のデータサイエンティストである桑田修平氏は次のように述べます。

「一般的なディープラーニングのモデルは中身がブラックボックス化されているため、トラブルに対処したり精度をチューニングしたりしようと思っても人が手を入れられる余地がありません。また、弊社のAI活用においては、主役はあくまでも人で、AIは人をサポートする道具として位置付けていましたから、やはり中身を人が見て理解できることを重視していました。その点、dotDataは『特徴量やプロセスが見える』という、当時としては画期的な特徴を備えていました」AIの精度を追求しようと高度なプログラミング技法を駆使した結果、開発した本人以外にはメンテナンスできなくなり、やがて運用が回らなくなってしまうというケースもAIのプロジェクトではよく見られます。その点においてもdotDataはGUI操作で直感的にモデルの設計ができるため、「精度と運用性を高いレベルで両立できます」と桑田氏は高く評価します。

アップセル・クロスセル成約率が2~3倍にアップ

アップセル・クロスセル成約率が2~3倍にアップ

三井住友海上は、dotDataの機能や性能を確かめるべく、米dotData社の支援を直接受けながら試験的にdotDataを用いて特徴量とAIモデルを構築し、既存手法で開発したモデルとの精度を比較を実施しました。その結果、既存モデルを上回る精度を発揮するとともに、保険商品を購入するさまざまな顧客の行動パターンを特徴量として発見できることが検証され、正式にdotData をMS1BrainのAIエンジンとして採用。2020年2月にサービスをリリースしました。

その導入効果は早々に表れ、それまで代理店の営業担当者の経験と勘、活動量に頼っていた営業活動が、MS1 Brainの提案を取り入れることで効率的かつ効果的になり、よりパーソナライズされた顧客体験の提供が可能になりました。「生命保険や火災保険に加入見込みの高いお客さまをスコアリングし、より見込みの高いお客さまに提案することで代理店活動の効率化とともにお客さま満足度の高い提案を実現できました。また、保険契約の解約や他社への切替意向の高いお客さまを抽出することで、解約・切替抑止のための活動に早期に取り掛かれるようになりました」(和食氏)

さらには「特徴量を可視化できる」というdotDataを活用し、例えば「年間の保険料が“6万5000円以上”の方は更改時にドラレコ特約を付帯しやすい」「“7年以上”契約継続している方はドラレコ特約を付帯しやすい」といったように、人間が感覚に頼っている点を具体的にアクションのとれる数値として定量化。これらの特徴量を明示的な営業ノウハウとして蓄積するとともに、代理店の営業担当者がお客さまに説明するための「トークスクリプト」として整備しました。これにより、販売商品数アップを狙うクロスセルや保険料単価アップを狙うアップセルの効果(クロスセルの場合は成約率、アップセルの場合は特約付帯率)は従来比2~3倍にまで達しています。

MS1 Brain以外でもdotDataの導入効果が続々と

こうした成果を受けて、現在dotDataをMS1 Brain以外の業務エリアにも適用しつつあります。例えば同社が提携する海外の生命保険会社に対して、dotDataを使った保険解約の要因を分析したところ、契約継続率に影響を与える「保険商品」や「支払方法」といった要因の抽出に成功。その結果から「保険料を継続して払えない人や、クレジットカードを持てない人に対して無理な販売をしているのではないか」という仮説を立て、インセンティブ設定の高度化を実現しました。これは重要施策に新たな示唆を得ることができたとして、同社のCEOから高い評価を得ています。

また、自動車保険の契約データや顧客属性データをdotDataで分析することで顧客の車買い替えタイミングを予測し、自動車ディーラーのご紹介を提案するといった保険とデータを通じた新たな価値創出も積極的に進めており、大きな成果を上げています。三井住友海上では、データや分析を活用した営業活動や顧客接点におけるデジタルの有効性が実感したことで、MS1Brainをはじめとするツールの活用が飛躍的に進展するとともに、社員・代理店のDX意識が向上しています。特徴量を自動で生成・抽出できるdotDataの強みを活かして、自部門が抱える課題解決のヒントを得たいというような相談も増えているようです。今後、データ分析人材の育成とあわせて、dotDataの利用を社内にさらに広めることで、データドリブン発想の文化を社内に醸成し、その先の新たなイノベーションを生み出していきたいとしています。

「他社に先んじてAIによるビジネスモデル変革を実現するために、dotDataを導入することはとても有用だと考えます。研究者のような専門的なスキルを必要とせず、ビジネスに役立つデータからの洞察、すなわち特徴量を発見することができる唯一の製品として、多くの企業のイノベーションを加速する製品であると確信しています」(松村氏)

三井住友海上火災保険株式会社

https://www.ms-ins.com/
所在地 〒101-8011 東京都千代田区神田駿河台3-9
従業員数 13,453名(単体) 21,293名(連結) ※2022年3月31日現在
創業日 1918年10月21日
事業内容

2001年10月、三井海上火災保険と住友海上火災保険の合併により誕生。保険・金融グループ「MS&ADインシュアランスグループ」の中核を担い、国内の損害保険事業を中心に、生命保険事業、金融サービスなどを幅広く展開。欧州、北米、アジアと世界41カ国にも拠点を構え、事業領域を拡大している。

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