AIによるビール製造の省力化をdotDataで実証実験。多様な知見を得る
業界:卸売業界
ソリューション:品質予測 排水計画自動化 故障予知
キリンビールは、ビール醸造計画の自動化AIツールをNTTデータと共同開発するなど、省力化や品質向上、技能継承を目的にAIを積極的に活用しています。その一環として2021年に実施されたのが、dotDataによる「ビールの品質予測」「排水計画自動化」「冷凍機の故障予知」に関する実証実験です。
課題
- 工場には微生物の働きで排水を浄化する処理施設が併設されていますが、その運用には、微生物の餌である排水の濃度や量の調整が求められ、ベテラン技能者の経験と勘に頼っていた。
- ビール製造では発酵中の温度管理用の冷水を用意する大型の冷凍装置が不可欠で、異常管理には以前からAIモデルを利用していますが、部品交換直後の閾値の 変化は重要な課題であった。
ソリューション
効果
- 品質予測検証では、属人的な判断と比較し、AIが大幅に精度を向上することが実証された。
お客様の声
木村 静太氏
dotDataに注目した理由は、既存AI基盤と異なり、複数の特徴量の掛け合わせによる説明が可能になることです。項目ごとに評価するのではなく、例えば『原材料がXで温度がYになると品質異常が発生しやすい』という説明ができることで、現場の理解もより深まるはずと考えました。また、直感的に理解できるUIも他社製品にないものでした。
人に優しい工場に向け
AI活用に取り組む
日本のビール事業の草分け的企業であるキリンビールは、ビール醸造のオートメーション化を数10年前に確立していますが、生産性改善などにてマルチタスク化が求められ、1人1人の作業負荷は増加しています。こうした中、新たにスタートしたのがICTによる省力化の取り組みでした。グループ製造拠点のDXを取りまとめるキリンビールの木村静太氏はその狙いをこう説明します。
「ICTは手段の1つですが、私たちが第一に目指しているのは、新しい技術で現場を変え、人に優しい工場を実現することです。もちろん生産効率の改善や品質管理の強化、CSVへの貢献も重要ですが、それだけでは現場は動きません。現場が直面する省力化や事故防止、技能伝承などの課題と紐づいたICT活用を重視しています」その一環としてAIに注目したのは2018年のこと。現場を巻き込んだAI活用の取り組みは、熟練者の知見に頼るほかなかった「ろ過計画の自動化」などの成果につながっています。
AI活用の前進を図るべく3テーマで実証実験を実施
次に注目したのが、品質予測のAIによる自動化です。ビール醸造では原材料である穀物の状態などに応じ、多様なパラメーターを調整しビール成分が一定条件に収まる製品製造が求められます。そのプロセスは技能者の経験と勘に頼るほかありませんでした。品質予測の自動化に関する実証実験では、全社的なAI基盤として運用中のサービスを含めた各社AI基盤の比較検討も同時に実施しました。その1つとして同社が注目したのがdotDataでした。
「dotDataに注目した理由は、既存AI基盤と異なり、複数の特徴量の掛け合わせによる説明が可能になることです。項目ごとに評価するのではなく、例えば『原材料がXで温度がYになると品質異常が発生しやすい』という説明ができることで、現場の理解もより深まるはずと考えました。また、直感的に理解できるUIも他社製品にないものでした」さらに大塚商会のSecond Opinion Serviceを利用することで、自社のエンジニアリソースを割かずに実証実験が行えたことも比較検討の弾みになったといいます。 大塚商会をパートナーにしたdotDataの実証実験は、そのほか2つ実施されました。
1つは製造工程における排水量および排水負荷予測の自動化です。大量の水を利用するビール製造では、排水処理も重要です。工場には微生物の働きで排水を浄化する処理施設が併設されていますが、その運用には、微生物の餌である排水の濃度や量の調整が求められます。ベテラン技能者の経験と勘に頼ってきた処理施設の運用を、製造実績や用水、蒸気使用量データに基づいてAIが自動化する効果が検証されました。
もう1つが冷凍設備の故障予知です。ビール製造では発酵中の温度管理用の冷水を用意する大型の冷凍装置が不可欠です。異常管理には以前からAIモデルを利用していますが、部品交換直後の閾値の変化は重要な課題になっていました。dotDataの高度なAIモデル構築の効果を検証することがその狙いでした。
AI運用では信頼できるパートナーの存在が重要
同社は検証を通じて、AIの活用には大きく2つの観点が重要だとわかったと語ります。1つはAI予測分析プラットフォームの成熟です。「品質予測検証では、属人的な判断と比較し、AIが大幅に精度を向上することが実証されました。今後は、複数の特徴量による説明が可能というdotDataの特長を最大限に活かすことに挑戦したいと考えています」
もう1つは、現場でのAI運用サポートの重要性でした。AIの実運用では、状況に応じた予測モデルのきめ細かなメンテナンスが求められます。省力化の取り組みが現場の新たな負荷につながるジレンマ解消に向け、同社が注目するのは信頼できるパートナーとの協業です。「AI導入では現場の業務プロセスの理解が不可欠です。今回の実証実験では大塚商会様が積極的に現場や当社研究所に足を運び、データの意義の正しい理解に努めていただきました。AI実装後のメンテナンスの省力化では、大塚商会様のような信頼できるパートナーの協力を得ることが1つの答えになると考えています」
キリンビール株式会社
https://www.kirin.co.jp/所在地 | 〒164-0001 東京都中野区中野4丁目10番2号 中野セントラルパークサウス |
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従業員数 | 3,585名 ※2022年12月31日現在 |
創業日 | 2007年7月1日 |
事業内容 | 食に始まりヘルスサイエンス、医に至る事業を展開するキリングループで中核的な役割を担う。 主力の「キリン一番搾り生ビール」などの基盤ブランドの育成に加え、さらなるビール市場の活性化・魅力化 に 向 け、「 SPRING VALLEY(スプリングバレー)」ブランドを中心に、多様なビールを体感できるクラフトビールカテゴリーの創造にも注力している。 |