セールスフォース活用事例:dotData Insight for Salesforceで実現するデータ・ドリブンな営業DX

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  • データ分析
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セールスフォースを活用した営業改革の必要性

セールスフォースは、世界No.1のCRMツールとして、現代の営業活動において不可欠な存在となっています。特にSales Cloudは、営業活動の履歴や進捗、顧客情報を一元管理することで、営業担当者が必要な情報に迅速にアクセスし、チーム全体での情報共有も容易になっています。

しかし、セールスフォースを導入しても、そこに日々蓄積されている膨大なデータが必ずしも十分に活用されているわけではありません。営業活動の現場では、依然として「経験と勘」に頼った意思決定がなされる場面が少なくなく、データが持つ潜在能力が引き出し切れていないのが実情です。

本記事では、セールスフォースに蓄積されたデータを最大限に活用し、営業担当者の意思決定を科学的かつ効果的に進化させる具体的なアプローチについて、詳しく解説します。営業改革の成功には何が必要なのか、またそのためのツールや手法についても触れていきます。

セールスフォースデータ活用における主な課題

セールスフォースのデータは、営業活動の効率化や顧客との関係強化に大きな価値をもたらす可能性を秘めています。しかし、それを効果的に活用するには3つの課題があります。

1. オブジェクトの複雑な構成

セールスフォースは多様なオブジェクト(テーブル)で構成されており、それぞれが密接に関連しています。Sales Cloudのデータモデルを確認すると、商談、顧客、活動履歴など多数のオブジェクトが複雑に関係していることが一目で分かります。この複雑さが、必要なカラムがどこに存在するか、オブジェクト間をどうリレーションすれば適切な分析ができるかを把握することを難しくしています。たとえデータサイエンティストであっても、構造を理解し、分析に活用するには相応の労力と時間が必要です。

2. データ品質の課題

セールスフォースのデータは入力時の自由度が高いため、データの質にばらつきがあるという課題があります。

  • 課題1:表記ゆれ
    業種や役職など、自由入力できる項目では表記が統一されていないことが多く、分析の妨げとなります。例えば役職1つ取っても「課長」「マネージャー」「Manager」と多様な記載が混在し、過去には1万種類以上の表記ゆれが存在したケースもありました。営業メモや日報といったテキストデータも同様に、分析に適さない形で残されていることが多いです。
  • 課題2:商談履歴オブジェクトの加工
    商談履歴(Opportunity History)は、ステージ変更や金額修正が行われるたびに新たなレコードが追加される縦持ち形式です。このままでは商談単位の分析が難しく、分析に適した形(横持ち)に変換する必要があります。そのオブジェクトの加工にスキルが必要になってきます。
  • 課題3:情報リーク
    商談の受注日を起点に分析すると、受注直前の行動(契約書作成など)が受注要因として抽出されてしまうことがあります。これでは「答えが漏れている」状態となり、真に価値あるインサイトが得られません。重要なのは、商談の初期フェーズでの行動や顧客特性など、早期段階の真の成功要因を抽出することです。
  • 課題4:不正確な入力
    営業担当者が感覚で見込み金額を入力したり、進捗更新を怠ったりすると、データの信頼性が低下します。不正確なデータでは、どんなに高度な分析をしても意味のある結果は得られません。

3. 横断的な分析テーマへの対応の難しさ

セールスフォース(Sales Cloud)のデータは営業活動に特化しているため、マーケティング施策や人事施策、在庫状況など他部門との横断的な分析が必要な場合、セールスフォース単体では限界があります。より深いインサイトを得るためには、外部データとの連携が必須となります。

セールスフォースデータ活用の課題を解決するdotData Insight for Salesforce

AIを活用した包括的なデータ分析プラットフォーム

セールスフォースデータ活用の課題を解決するために、dotDataはAIを活用したデータ分析プラットフォーム「dotData Insight」と、セールスフォース専用ソリューション「dotData Insight for Salesforce」を提供しています。
dotData Insightは、営業活動で蓄積されたデータから、受注や成長に強い関係を持つデータパターン(特徴量)をAIが自動で抽出し、それを営業戦略に落とし込むための意思決定を支援します。

dotData Insight for Salesforceの主な機能

dotData Insight for Salesforceは、セールスフォースの営業データを最大限に活用し、データ・ドリブン営業DXを実現するための主な機能を備えています。

  • 成功商談に共通する特徴をAIが自動発見
    データの中から、成約した商談に共通する成功要因を自動で抽出します。
  • 表記揺れや入力ミスの自動補正
    生成AIによるデータクレンジング機能で、煩雑な表記統一作業を不要にします。
  • 商談成否や優秀営業員の特徴など、典型的な分析結果を提供
    営業活動改善に直結する具体的な知見を提示します。
  • セールスフォースデータの現状をプロがアセスメント
    データ品質や入力ルールを可視化し、改善方針を明確にします。

これらの機能を活用することで、セールスフォースに蓄積されたデータを「営業の武器」に変えることが可能になります。

セールスフォースデータを活用した標準3テーマ分析

Sales Cloudのデータ分析は多様なユースケースに適用できますが、特に多くの企業で有益な「標準3テーマ」は以下の通りです。

テーマ1:商談成約要因分析

受注商談と失注商談の差異を特徴量として抽出し、質の高い商談の共通要件を明確化します。営業担当者は、初期段階で取るべき具体的な行動が分かるため、受注確度を大幅に高められます。

テーマ2:セールスステージ遷移分析

商談がスムーズに次のステージへ進むために必要な要因を明らかにします。時間軸での詳細な分析により、各ステージでどんな活動をすべきかが明確になり、営業プロセス全体を最適化します。

テーマ3:優秀営業員の特徴分析

ハイパフォーマー(上位⚪︎%の営業担当者など)の営業活動をデータで可視化し、そのアプローチを一般化します。これにより、営業チーム全体の底上げや人材育成の効率化を可能にします。

データ・ドリブンな営業DXを広げる追加ユースケース

標準テーマだけでなく、セールスフォースデータとdotData Insightを組み合わせることで、今後以下のような追加ユースケースへの展開が期待されています。

  • 高単価受注要因分析:単価の高い案件の共通条件を明らかにし、高付加価値商談の創出に活かす。
  • 高受注率顧客セグメント分析:高確率で受注に至る顧客像を特定。
  • パイプライン成長要因分析:営業パイプラインが拡大している要因を把握。
  • 新規顧客獲得要因分析:未開拓市場への最適なアプローチ手法を抽出。
  • アップセル・クロスセル成功要因分析:既存顧客からの売上拡大のカギを特定。
  • LTV向上要因分析:顧客の長期的価値を高める要因を抽出。
  • 顧客離反要因分析:離反の兆候を早期に察知し、維持施策を立案。
  • 顧客ロイヤリティ向上要因分析:継続利用や推奨意向に寄与する要因を明らかに。

dotData Insight for Salesforceの導入プロセス

dotData Insight for Salesforceの導入は、短期間で効果を実感できるトライアルプロセスからスタートします。Step1〜Step2で約3週間、Step3で約3週間、合計6週間のスケジュールで進行し、営業現場で活用できる具体的な成果を得ることができます。

Step1:データ準備・アップロード

まずは、セールスフォースから必要なオブジェクトデータを抽出し、アップロードします。

データ定義書を見ながら抽出するほか、データコネクタを利用したテーブル抽出にも対応しています。営業部門が日常的に入力しているデータをそのまま利用するため、複雑な前処理や大規模なデータ整形は不要。最小限の作業で分析の準備が整います。

Step2:簡易実行とデータアセスメント

続いて、商談成約要因分析を簡易的に実行し、現状のデータでどの程度の分析が可能かを確認します。

同時に、入力の不正確さやフェーズ運用の歪み、表記揺れ、データの欠損などを専門家が精査し、データの品質を評価(アセスメント)します。これにより、「現状データで分析を進めて良いのか」「どこを改善すべきか」という方向性が明確になります。データ品質に不安がある企業でも、トライアル段階でGo/No-Goの判断ができるのが特徴です。

Step3:dotData Insightと特徴読み解き支援

本格的な分析フェーズでは、AIが「成約要因」「ステージ遷移」「優秀営業員」という標準3テーマをもとに特徴量を抽出します。

抽出された特徴量は営業部門でも理解しやすい文章と数値で提示され、読み解き会(ワークショップ)を通じて実際の営業施策に落とし込みます。これにより、データ分析に慣れていない現場でも成果をアクションにつなげられる状態になります。分析結果はCSV形式で出力可能なため、既存のダッシュボードやレポートにも容易に統合できます。

継続サービス:分析テーマの拡張

トライアル終了後は、標準3テーマだけでなく、顧客ごとの課題に合わせたカスタムテーマ分析に拡張可能です。
さらに、Salesforce外のCRM・ERP・HRデータとの連携や、商談スコアリングの継続運用など、より高度な営業DX施策へと広げていけます。

6週間の導入トライアルを経ることで、営業現場がすぐに実践できる具体的な示唆を獲得し、データ・ドリブンな営業の第一歩を踏み出せます。

データ品質課題を解決する具体的ソリューション

1. 生成AIを活用したデータクレンジング

カテゴリデータの自動名寄せ

「課題1:表記ゆれ」で触れたように、役職・部門・業種などのカテゴリカラムには膨大な表記ゆれが存在します。これを生成AIが自動で検出・統合します。
たとえば、営業担当者が入力した「課長」「マネージャー」「Manager」といった異表記を「中間管理職」という統一カテゴリに自動変換します。これにより、手動で辞書を作成したり複雑な正規表現で対応する必要がなくなり、分析に適したデータが短時間で整備できます。

テキストデータの特徴量化

また、営業メモや日報、議事録といった自由記述のテキスト情報から重要な文脈を抽出し、Yes/Noやカテゴリ値として新たな分析用カラムに変換します。

たとえば、「予算が承認済みか」「部長クラス以上との面談があったか」といった重要情報を自動でラベル化。これにより、従来は扱いづらかったテキスト情報も数値データと同様に分析可能な形で活用できます。

2. ステージ遷移テーブルの作成

ステージ遷移テーブルとは?

「課題2:商談履歴オブジェクトの加工」で指摘した問題に対応するため、dotDataは縦持ち形式で記録される商談履歴(Opportunity History)を、横持ち形式の「ステージ遷移テーブル」に変換します。実際のデータには、再登録や修正によって時系列に沿っていないケースもありますが、様々な例外処理ルールにより時系列に矛盾のないテーブルを作成します。
これにより、各商談がどのステージにいつ到達したかを1行で俯瞰でき、時系列分析が容易になります。

ステージ遷移テーブルを使った分析

このステージ遷移テーブルを用いることで、分析の基準時点を柔軟に制御できるようになります。たとえば、「セールスステージ2への遷移日」を基準日とし、そこから一定期間内に受注した商談を対象に、基準日以前の活動データから成功要因を探し出すことが可能です。

こうしたアプローチにより、受注直前の情報ではなく、営業プロセスの早期段階での活動や顧客属性など、真に受注に影響を与えた要因を特定でき、「課題3:情報リーク」も解決します。

3. データアセスメントによる改善提案

データアセスメントは、セールスフォースデータの品質を診断し、特に不正確な入力や運用上の歪みを把握・改善するための取り組みです。商談オブジェクトなどをカラムごとに精査し、クローズ定義や独自拡張による運用の癖を明らかにして、ベストプラクティスとの差異を洗い出します。そのうえで、分析に適したデータ構成や運用ルールへの見直しを提案し、クリーンで分析可能なデータ基盤を整備します。

こうした改善によってデータが整理され、現場での入力精度も向上し、「課題4:不正確な入力」も解消されます。

外部データ連携による横断的分析の実現

セールスフォースデータだけでは解決できない課題には、CRM、HR、ERPなど外部データの統合が有効です。

  • Salesforce + CRM:マーケティング施策の商談貢献度分析 など
  • Salesforce + HR:人材施策と営業パフォーマンスの関係性分析 など
  • Salesforce + ERP:在庫状況・価格変更が受注に与える影響分析 など

これにより、営業活動の可視化から経営レベルの意思決定支援までを一貫して行えるようになります。

まとめ:セールスフォースデータを“営業の武器”に

Salesforceを導入するだけでは、営業活動の効率化は限定的です。しかし、dotData Insight for Salesforceを活用すれば、営業データの可視化から高度なデータ分析、実践的なアクションプラン設計までをワンストップで実現できます。データ・ドリブンな営業DXは、単なるIT導入ではなく、営業プロセスそのものの進化です。
今こそ、自社に合った方法でセールスフォースデータを最大限活用し、営業改革の新たなステージへ進むべき時ではないでしょうか。dotDataの専門チームが、御社の課題に合わせた最適な活用プランをご提案します。まずはお気軽にご相談ください

Atsushi Kanda
Atsushi Kanda

データサイエンス・ディレクター。 伊藤忠商事、リクルート等を経て、2024年にdotData入社。dotData製品導入時の検証(PoC)を担当するデリバリーチームのリード、および個々のPoCのプロジェクトマネジメントを担当。 JDLA Deep Learning for Engineer(E資格)保有。

dotDataのAIプラットフォーム

dotData Insight 業務部門が自ら洞察を導き出す

dotData Insightは、事業部門が主役のビジネスアナリティクスを実現する革新的なデータ分析プラットフォームです。業務データに隠れたパターン(特徴量)を、BIツールのような直感的で使いやすいインターフェースを通じて提供します。dotData独自のAIが解析するデータの特徴を、生成AIの「世界知識」で補完し、実用的なビジネス仮説を生み出します。この融合により、業務部門は、データの洞察を直感的に理解し、新しいビジネス仮説を立て、戦略立案や施策実行をより効果的に行うことができます。

dotData Feature Factory 特徴量をアセット化し全てのAI/BIを強化

dotData Feature Factoryは、データサイエンティストやIT部門が、企業がキュレーションされたデータ(すなわち特徴量)を開発するために、データ加工に関するノウハウを再利用可能なアセットとして蓄積する仕組みを提供します。データ中心に構築される特徴量空間から、アルゴリズムによってデータに隠れたパターン(特徴量)を発見し、特徴量発見のスピードと効率、再利用性と再現性、専門家間の連携、品質と透明性を向上させます。dotData Feature Factoryは、機械学習モデルによる予測、ビジネスインテリジェンス(BI)によるデータ可視化、或いはマーケティングオートメーションのような、全てのデータアプリケーションを強化します。